ドクターゆきこの温泉講話9

温泉通信 第9回

「海水と温泉水」

 

季節は外れてしまいますが、あまり知られていない話かと思います。海水と温泉水の共通点と異なる点についてのお話です。

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海水と温泉水は「地殻から湧出した液体」という点で、含有成分を共有していますが、次のような違いもあります。

 

【塩化マグネシウム(Mgイオン)濃度】

温泉水のその濃度は、海水の100分の1ほどです。地下で双方の成分が同程度であっても、温泉水は雨水の侵入を受けた土壌から湧出するので、薄められていると考えられます。

 

【酸化還元電位】

かけ流し温泉「山水園」の湯では-251mVという良好な還元性(簡単に言うと新鮮さ)を保持していますが、海水では深海でも-30から-40mV、界面付近では-10から20mVと、酸化が進んでいます(オホーツク海での計測による)。これは、湯船で長時間空気に触れて老化した温泉水に似ています。

 

つまり海水は「老化した冷泉」と言えます。しかし海水浴の効果は、何よりも広い海に向かって心身ともに開放的な気分になれることでしょう。紫外線に注意し、温泉ともども上手に活用したいものです。

 

(監修:温泉療法専門医 那須野友規子)