自然通信3 紫陽花とKさんの話

「みどりのゆび」という言葉があります。

その人が触れるだけで植物が育ち、花を咲かせる、

そんな人のことを言います。

山水園に半世紀以上も勤めてくれた仲居のKさんは、

そのみどりのゆびの持ち主でした。

紫陽花(アジサイ)が大好きだったKさんは、あちこちから枝をもらってきては挿し、

それがまた見事にみな活着して、すくすくと育ったものでした。

山水園の入り口への道の左側に咲く、さまざまな色の紫陽花は、そのKさんの置き土産です。

雨に濡れるほど、しゃんと顔をあげて咲くその姿は、うっとうしい梅雨の日々を明るく彩ってくれます。

もう十数年ほども前に亡くなったKさん。

ひとは過ぎていっても、花は今なお毎年美しく咲いて、たくさんの人を喜ばせています。